朝日新聞の記事がとても印象的だったので紹介します。

今の日本の実態を考えるのに役に立ちそうなので、1人でも多くの人に読んで欲しいの。
この通りかどうか、私にはわからない。

久々に会ったある知人は、モリカケさくらがあったにもかかわらず政治に全く関心がなく、日本がひどい状態であることも夢にも思ってない風情です。
いろいろ話して聞かせても、まるで他人事のようで自ら調べようとはしません。
何故なのか、それが知りたい。


朝日新聞 14日 「見たいものだけ見る政治」支えた国民意識 宮台真司氏
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 憲政史上最長となった安倍政権の終幕に向け、「ポスト安倍」を決める自民党総裁選が進む。だが「安倍政権は終わっても、安倍政治は終わらない」と指摘するのが社会学者の宮台真司・東京都立大学教授だ。その「安倍政治」とは、多くの国民が共有している「自意識」によって支えられているから、という。

 ――安倍政権が終わることを「残念」と評していると聞きました。

 「総裁選も含めて今の政治で起きているのは、『沈みかけた船=日本社会』の中の座席争いです。どちらにせよ沈むなら、だらだらと沈むよりも、加速度的に沈む方がよい。人は、変化そのものよりも変化率の変化に反応します。熱湯に入れられたカエルはすぐ逃げ出すのに、水温を徐々に上げると、死ぬまで温度の変化に気づかない――。『ゆでガエル』の寓話(ぐうわ)が知られますが、それです。沈み方が一定だと『ゆでガエル』になります。だから『安倍政治』の継続を望むと語ってきました」

 「安倍政権下で日本社会の『劣化』は予想通り進みましたが、多くの日本人は『見たいものしか見ない』。劣化の現状が認識されていません。ならば、何らかの弥縫(びほう)策で対応するよりも、加速度的に悪くなって底を打った方がいいでしょう」

 ――安倍政権の7年8カ月で、株価は上昇し、低失業率を維持しました。好景気も戦後2番目の長さで続きました。それでも「劣化」ですか。

 「安倍政権はそのように『結果』を自画自賛し、メディアもそう報じてきた。しかし『結果』を強調するならば、なぜ一部の経済指標だけに注目するのか国民の所得は、1997年以降ほぼ一貫して低下しています。OECD(経済協力開発機構)諸国でそんな国は日本だけです。個人の生活水準の指標である1人当たりの国内総生産(GDP)は、2018年にイタリアと韓国に抜かれて世界22位になりました。日本の最低賃金の低さはOECD諸国の平均の3分の2にも満たない失業率の低さは非正規雇用の増加で『盛った』ものでしょう。経済指標だけに注目しても、『盛れない』数字はこれだけあります」

 「一方社会の健全さを示す社会指標に目を向けると、もっと悲惨です。日本青少年研究所の14年高校生調査では、『どんなことをしても親を世話したい』割合は中国88%、米国52%、日本38%。『親をとても尊敬している』割合は米国71%、中国60%、日本38%。『家族との生活に満足している』割合は中国51%、米国50%、日本39%。家族が空洞化しています」

 「それが自意識にも強い影響を与えます。同調査では『私は人並みの能力がある』について『とても』と答える割合は米国56%、中国33%、日本7%。『自分はダメな人間だと思うことがある』を肯定する割合は米国45%、中国56%、日本73%。子どもについてユニセフ(国連児童基金)が今年公表した幸福度調査では、先進・新興国38カ国の下から2番目です」

 「結局、社会の穴を、一部の『盛れる』経済指標で見えにくくしているだけです。実際、総裁選の候補者が語るのも、おおむね経済の話ばかりです。社会のひどさに注目する候補はいないのだから、誰がなったところで安倍政治と大差のないものが続くでしょう」

 ――辞任を発表する直前まで、安倍政権の支持率は下がっていましたが、それまでは一時的に下がってもまた持ち直し、選挙にも勝ち続けてきました。そんなに社会がひどいなら、なぜ支持されてきたのでしょう。

 「『野党がだめ』『選挙制度が与党に有利』といった要因はあるでしょう。でも小さな話です。本質的な問題は、一部の経済指標だけに注目して語る安倍政権のあり方は、多くの国民の意識のあり方と同じだということです。『見たいものだけを見る』。国民の意識がそうなっていて、安倍政権はそれに乗っただけです。これは政権にだまされている、という類いの話ではありません。現代日本のあり方に起因します」

 ――「見たいものを見る」といえば、最近ではSNSの発展で、自分のタイムラインが自分と似た意見ばかりになっていることを説明する文脈で聞く表現です。

 「少なくとも日本において、ネットがその傾向を加速させましたが、原因そのものではない。別の要因が重要です。英国の社会学者ジョック・ヤングは現代社会の特徴を『過剰包摂社会』と呼んでいます。僕は『疑似包摂社会』と訳した方がいいと思いますが、格差や貧困があってもそれを個人が感じないですむ社会のことです」

 「具体的なイメージで言います。スターバックスの店内を思い出しましょう。そこでおしゃべりしたり、パソコンで仕事をしたりしている人たちは、外見では所得格差があるかどうかはわかりません。失業して生活に困っている人がいるかもしれないし、その横に起業して成功したお金持ちが座っているかもしれません」

 「日本では、70年代までは見た目で大体わかりました。ブルーカラーかホワイトカラーか、地方出身者か都会出身者か、という違いは隠せませんでした。だから、下層出身や、地方出身者が、疎外感を抱きやすく、連帯もしやすかったのです」

 「いまは違います。日常生活で自分の出身を意識する局面が少なく、連帯ができないので貧しさが自意識の問題になる。経済的貧困によって本当は苦しい状況に追い詰められていても、です。いわば粉飾された自意識です。日本社会の劣化がここまで放置されてきたのは、『粉飾された自意識』によって『見たいものしか見ない』営みに支えられていたからです。安倍政権を支えてきたのは、『粉飾された自意識』です」

 ――ただ「粉飾」だとしても、疎外感を抱かないのならばいいことではありませんか。

 「いや、『粉飾』は表面的です。よく話を聞くと、やはり『痛み』を抱えています。大学生に話を聞いても、周囲には『痛み』を語らないけれども、学費の工面で悩んでいたり家族の不和で傷ついていたりします。社会人ならば、会社で理不尽な目に遭うなどしています。深く話を聞いていくと、ぽつりぽつりと告白し始めます。ただ『周囲には言えない』と言います。言わないから『痛み』を周囲と共有できない。若年層に顕著です。若年層ほど安倍政権支持の割合が多かった背景の一つです」

 ――なぜですか。

 「『痛み』の告白をしてしまうと、どこかで自己責任が意識されてしまうからです。『それはお前自身のせいじゃないの?』とね。実際に他人にそう言われるよりも、本人の自意識としてそう考えてしまう。これは新自由主義のイデオロギーとしての自己責任論ではない。思想の問題というより、自分に『痛み』なんてない、むしろ自分の力でうまくやっていると周囲に見せないといけない、という感情の問題です」

 「このような自意識を持つ者が、政治的な討議をすることはできません。『痛み』をそれぞれが語り、『痛み』を共有することで、『痛み』の原因は何だろうかという議論が可能になって、政治の話に移行できます。若年層ほど政治に無関心なのは、自分の『痛み』を見たくない、だから『痛み』をシェアしない、という作法によります

 ――見たいものしか見ない路線は政治だけではないと。

 「多くの国民もそうです。安倍晋三首相とは、そういう意味で、いまどきの日本国民を象徴しています。安倍氏本人は『戦後レジームからの脱却』と言ってきましたが、安倍首相こそ『戦後レジーム』的な政治を象徴していた、という笑い話が典型的です」

 「確かに憲法改正はしたかったんでしょう。僕も改憲論者だからわかります。ですが、あくまで米国が許す範囲での日本の安全保障で、安全保障のあり方を抜本的に考え抜いていない。『米国は味方だ』という気分だけが根拠なので大統領が変わる程度で振り回されます」

 「そもそも日本の戦後政治の右左はイデオロギー対立に見えて、右は『米国が許してくれる範囲での愛国』で、左は『米国の核の傘のもとでの護憲平和』です。対立しているように見えて、思考停止的な米国依存が共通しています。安倍氏が『戦後レジーム脱却』と言いながら、米国のトランプ大統領との個人的な関係を、聞いているこちらが恥ずかしくなるほど強調していたのをみるたびに、脱却どころかいかにも『戦後レジーム的』だと感じます」

 ――安倍氏に反発する人も少なくありませんでした。

 「反安倍の多くを占める護憲平和の左は、右が『対米従属の枠内での安全保障』しか考えないのと同じで、『米軍に守られた護憲平和』に過ぎません。その負担を沖縄に押し付けて平然としています。右も左も同じ穴のムジナ。『自意識による粉飾』を受けた『戦後レジーム』です」

 ――首相が代わることで、何が変わるでしょうか。

 「変わらないでしょう。日本社会は明らかに格差が広がり、分断も進み、閉塞(へいそく)しました。しかし、その社会的な亀裂は、政治家と市民の粉飾された自意識ゆえに、政治的な課題として認識されることはありません。安倍か反安倍かとか、右か左かは日本社会の本当の分断と重ならない『戦後レジーム』ののんきな営みです」

 ――では、そうした社会の分断と重なる対立軸を設定すると、何になりますか。

 「挑発的な言い方をすれば、『クズかまともか』です」

 ――えっ?

 「未来世代のことも考えず、自意識ゆえに社会の悲惨さを直視できない人間と、真実を直視できる人間。自意識のベールにくるまれたままで感情的に劣化した人間と、そうではない人間との対立です。僕はその対立にだけ、未来を開く鍵があると思っています」

 「ただ予想していた通りですが、総裁選をみていても、3人の候補ともにだめです。コロナ禍の経済をどうするかといった話に終始しています。日本社会はもっと厳しい現実に直面しているのに、その現状を見た上で、こうしなければならないという提案がない」

 「菅義偉さんが新首相になるならば、安倍政権下で『見たいものしか見ない』という路線を率先してきた人ですから、その傾向は変わらないどころか加速します。短期的にはどうにもなりません。そもそも、市民が『見たいものしか見ない』ことを望んでいるのですからね」(聞き手・高久潤)

     ◇

 みやだい・しんじ 1959年生まれ。東京都立大学教授。著書に「社会という荒野を生きる。」「正義から享楽へ」など。現代社会、戦後思想など幅広く評論。 
『疑似包摂社会』と訳した方がいいと思いますが、格差や貧困があってもそれを個人が感じないですむ社会

そうなのだろうか。見えてない、いや感じてないのか?
山本太郎が参院選で貧困社会を切々と訴えて、大きな流れとなった。
その後社会やメディアは、貧困へもっと目を向けるかと思ったけど、全く違っていた。
それは私にはとてもショックな事だったのだけど、みんな自覚がない感じない「擬似包摂社会」なのか。(; ꒪֊꒪)


右は『米国が許してくれる範囲での愛国』で、左は『米国の核の傘のもとでの護憲平和』です。

これはまぁ、なんとなくわかる。
左(野党やその支持者)でも沖縄基地問題や地位協定の改正を訴える人が、そんなに多くない。
貧困や格差も、どこまで真剣なのかと思うことが多い。


『見たいものだけを見る』。国民の意識がそうなっていて、安倍政権はそれに乗っただけです。これは政権にだまされている、という類いの話ではありません。現代日本のあり方に起因します」


私はこの説に100%同感するわけじゃない。
メディアが本当のこと、必要なことを言わないのが1番の原因だと思う。
だけど、識者でそれをいう人は滅多にいない。(謎)

多分投票に行かない半分は、何も考えてないし世論調査にも協力しない。
だけど、あとの半分はこんな感じかも知れない。
だから、メディアがモリカケさくらを報道して、一時的に支持率下がってもすぐ上がる。
アベノマスクで支持率が下がっても、アベ辞任報道でわっと上がる。
(※メディアの世論調査も100%信じてるわけじゃない。)


『クズかまともか』です

わわわ、わかるけど挑発的すぎるんじゃ?f(´-`;)
自分の事として自分の頭で考えるか否か。
考える人を増やしていかなければ、日本終わります。
みんなが規格品として生きていくのを是とするのなら、それでもいいのかも。
(私は良くないっ)

個性がなければ、自分がなければ、考えなければ、ただの規格人間ですよ。
政府のいいようにされ続ける、大人しい企画人間。
それでいいのか、考えてみて下さいね。




有料記事なのだけどこっそりコピペ。( ̄b ̄) シーッ